休みができたから
ダーツの旅をした
特に行き先はなかったから 東京駅の新幹線チケット販売機で 目を瞑ってぽちぽちして行き先を決めた
新幹線の行き先なんて 日帰りで帰って来れそうだから どこに決まっても怖くなんかない
「燕三条」
新潟県の燕三条に決まった
知らない場所だ
はやぶさの方がかっこよかったなぁなんて思いながら 新幹線のトキに乗る トキってどんな鳥なんだろう 鶴みたいな鳥かな? 答えを知ることに興味がない
10号車
隣の9号車は働く人のための車両らしい 電車に乗ってる時くらい 何も考えず揺られて連れて行かれてしまえ と思った 働くのがすきな生き物らしい 本当は働かないために頑張る方が自然だと思う 頑張らないために工夫するはずの人間は 頑張るために頑張ってしまっている 単純化している 人間は本能をどこに忘れてきた? 理由で説明できない よくわかんないけど好き そんなような めんどくさくて複雑な気分と本能を忘れてしまったようだ
新幹線で運ばれる
わたしは微生物を運ぶキャリアーだけど 電車や飛行機に乗るときは運ばれる側の立場になる 微生物は私たちに「運んでくれてありがとう」なんて思っていなさそうだ わたしも 黙ってても運ばれている ニイガタという場所に
新潟に向かう
なんで特に行きたくもない新潟県に向かっているんだろう と思う 愚かだ わたしは愚かな生き物だ お給料の2万円の使い道として正しかったのだろうか そもそも正しいお金の使い方ってなんだろうか わたしはわたしの正義を忘れかけている 正しさとは?
でも久しぶりに
馬鹿馬鹿しいことがしたかった
人生なんて無駄で馬鹿馬鹿しいの連続のはずだ わたしは自分の愚かなところが好きだ
効率 便利 無駄の排除 が心を貧しくする と私は思っている
目的がないことをするのは 難しい
お金を払って目的がないことをする必要がある 悲しい時代になってしまった わたしの心がすでに貧しいと思った

市内の循環バスに乗る
運転手のおじさんは 面白い遊びだね と言った おじさんは 東京の銀座にいたらしい 鈴鹿にもいたらしい 結局 地元のツバメに還ってきたそうだ ツバメはいいぞ と言った
帰る場所があること 迎えてくれる人がいることは幸せだろう だって「帰れる」んだから どんなに嫌なことがあっても 帰れる
人はどこかに帰るために生きてるんじゃないか?と思った 誰かにどこかで待たれているのかもしれないし 自分が求めている場所がどこかにあるかもしれない
わたしも何かの循環の一部だ わたしはどこに帰るんだろう 最期はどこに行きつくんだろう
てきとうなバス停で降りる
運転手のおじさんに「一日五便しかないから 帰りのバスはないよ 本当にここで降りるの?」と聞かれる お金はあるからタクシーに乗るから心配しないで と言ったら「次はゆっくり来なさい 日帰り温泉だって 634メートルのスカイツリーと同じ高さの山だってあるんだよ」と言われる
ツバメの魅力ってなんだ? スカイツリーと同じ高さだからなんだ? その山の高さをスカイツリーで示して何になる? それが表現でいいのか? 比較が何を生んでいる? それは美しいか? 東京は 東京には 何でもあって何にもない 誇れるものってあるのか? これじゃあ どこに行ったって変わらないじゃないか
ツバメを歩く
新潟に来てもマクドナルド 新潟に来てもワークマン 新潟に来てもセブンイレブン ここにしかないものはどこにある? 見つからない 「特別」は幻想なのか わたしは唯一を見つけたいのに 唯一なんてないのかもしれない
はやく帰りたい と思った
二時間に一本しか来ない電車の時刻表を見て愕然と ここに立っていることに なぜわたしはここへ?
どこに逃げても 何もない
たぶん 癒してくれる場所や逃げられる場所なんてないんだ
今年のはじめに決めた ことし絶対川崎を出てやる もうここにはいたくない その決意が揺らいだ 川崎の前に住んだ横浜が恋しい でも横浜にはもうわたしの居場所はない 横浜の前に住んだ世田谷にはわたしの居場所はもっとない 私の居場所なんてないんだ うん なくていいんだ
わたしは どこに行く?
どこに向かう?
みんなはどうやってどこに行くかを決めたんだろう?と考える なんでパティシエになったの?なんで革職人になったの?なんで?どうして?教えてよ そのときわたしは 自分が答えを探していることに気づいた 恥ずかしくなる
そして 答えを探すのが楽しかったはずだったことに気がつく 人は 心に余裕がないと 答えを探すではなくて答えを欲しがってしまうようだ 探すことを愛せなくなってしまう
運転手のおじさんに言われた
新潟で一番大きいのは新潟市 二番目は長岡市
知らなかった ここツバメ市の人口は79000人 知らなかった
たぶんおじさんに出会わなかったら 知らなかった 吉田 西ツバメ ツバメ ツバメ三条 弥彦線には ツバメがよく止まる
このわたしに ツバメが刻まれた これで新しいわたしが出来上がった 昨日のわたしと今日のわたしは違う わたしの存在が唯一だから 唯一の場所なんて 唯一のことなんて探す必要すらないことを思い出す
おそらく
わたしの人生で最も無駄で
くだらなくて
とても不安になる旅だった
何もしない という旅
すぐ刺激を求めてしまう
すぐ目的を必要としてしまう
弱い弱い心と 向き合う旅
さぁ 帰ろう
いつでもウェルカムをしてくれる
大好きな夫婦が営む 大好きなイタリアンへ
私に帰る場所があることをようやく思い出せた
新幹線の 隣の座席のお兄さんの真っ青な髪を美しいと思った キキララみたいだなと思った したいことをする その美しさに見惚れた
誰もあなたを止めない
どこまでも 好きな場所へ